法律情報
部下に対する行き過ぎた指導とパワハラとは
1 会社の上司が部下(勤続9年)に対し、仕事上の注意指導として、
①「新入社員以下だ。もう任せられない。」「何で分からない(のか)。おまえはバカ(だ)。」等と発言したこと
②部下が鬱病の診断書を添えて休職を願い出たのに対し、休養は有給休暇で消化するように指示し、3か月の休養をとったら異動の話は白紙に戻り、当該上司のもとで仕事を続けることになる旨告げたこと
が不法行為(パワハラ)に当たり、これにより当該部下が鬱病を発症し、あるいは進行したことにつき、当該上司及び使用者に損害賠償を命じた判決が紹介されています(東京地裁平成26年7月31日判決・判例時報2241号)。
2 上司の部下に対する発言内容を具体的に証明することは難しく、上記の認定はギリギリのところ(証拠によって最低限認められたところ)で、おそらく裁判所は、もっと激しいパワハラがあったと推測したのではないかと思われます。
3 本件の他にも、①上司がミスをした部下の頭を叩く、「バカヤロウ」などと怒鳴る、退職願を書くよう強要したことはパワハラに当たるとして例(名古屋地裁平成26年1月15日判決)、②「いつまで新人気分」、「詐欺と同じ、3万円を泥棒したのと同じ」、「死んでしまえばいい」、「辞めればいい」、「今日使った無駄な時間を返してくれ」等と執拗に繰り返した行為をパワハラとした例(福井地方裁判所平成26年11月28日判決)などがあります。
4 上司の指導であっても(たとえ、上司の目から見たら部下が「ダメ社員」であっても)行き過ぎた注意や指導はパワハラとして不法行為に当たり、当該上司はもとより使用者(会社)も不法行為責任(損害賠償)を負う結果になることがあります。部下に対して注意指導をするときは、発言(言葉づかい、語調など)や部下の受け止めかたに十分に配慮する必要があります。