法律情報
「共同親権」制度を朗報とお考えの諸氏に
離婚後の子に対する親権につき共同行使(共同親権)が可能となる民法改正がなされ、2年以内に施行される予定です。
すでに離婚している両親についても「共同親権」に変更する道が開かれたため、これまで養育費は負担させられても親権はおろか面会もままならなかった方々にとっては朗報と受けとめられているようです。
しかし、新設された「共同親権制度」には思わぬ落とし穴−立法段階で議論のあった、共同行使の難しさや弊害でという問題ではない、共同親権者に対する『隠し球』−があります。
どいうことかというと、新設された民法824条の3です。同条によると、子を監護する者(*)は、子の監護等に関して親権者と同一の権利を持ち、子の監護・教育・居所指定(どこに住むか)・営業許可に関し単独で決定できるとし、さらに他方の親権者はその決定を妨げてはならない、としているのです。
(*)離婚の際に両親の協議で子を監護(実際に子を養育(世話)をするという意味)する者と定めた者、あるいは協議がまとまらないときに家庭裁判所が定めた者(家庭裁判所は変更をすることもできる)をいい(民法766条)、協議もなく一方的に子を連れて出て別居を始め、事実上養育している場合は当たりません。
つまり、監護・教育・居所指定・営業許可に関しては、親権者より監護者の方が優先するということです(二宮周平「離婚語の選択的共同親権制〜その仕組みと今後の課題」戸籍時報853号2頁)。共同親権の場合であっても、監護者が優先です。
「親権」のうち、残りは子の財産管理ぐらいしかありません。最も重要な子の成長や将来にかかわる事項がすっぽり抜け落ちることになります。
その結果、どうなるか? なんのことはない、「親権」争いが「監護者」争いに形を変えるだけでしょう。まあ、皮肉に見れば、現に「面倒を見ることができない親」は口出しするな、ということかも知れませんが・・・。