公益通報者保護法。額田・井口法律事務所(ぬかだ・いぐち法律事務所)

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公益通報者保護法

LR21 2024.10.3

公益通報者保護法

前兵庫県知事の振る舞いから、公益通報制度が改めて注目されています。

公益通報制度は、一口でいえば、公益通報をした者に対し、使用者(事業者)が解雇、降格その他の不利益取扱をすることを禁止することで、公益通報を促し、事業者に法令を遵守させようという制度です。

公益通報とは、従業員(派遣労働者、業務請負企業の従業員を含む)、役員が、事業者において犯罪行為等の「通報対象事実」が生じ、または生じようとしている旨を、事業者等へ通報することを言います(公益通報者保護法2条1項)。

「通報対象事実」とは、公益通報者保護法にあげられた法律に基づく、①犯罪事実、過料の対象となる事実、②行政処分や勧告に従わないことが犯罪となる場合における、処分等の対象となる事実をいいます(*)(同法2条3項)。刑法など7つの法律のほか政令で500近い法律が指定されているので、犯罪や行政処分が問題になる法律は網羅されているといってよいでしょう。

(*)例えば、個人情報法保護法は、個人情報の目的外取扱を禁止し(18条1項)、個人情報保護委員会は違反者に対して違反行為の中止等を勧告することができ(148条1項)、勧告に従わない場合はその勧告に係る措置をとることを命じることができるとしており(同条2項)、この命令に従わないときは1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられますが(178条)、この場合の、18条1項違反の事実が通報対象事実に当たります。

保護される通報の形態は、下表のとおりです(同法3条)。

通報先 通報できる場合、通報方法等
事業者、その外部通報窓口 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると考える場合
処分、勧告権限を持つ行政機関 ①通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信じるに足りる相当の理由がある場合
又は、②(a)通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると考える場合で、(b)通報者の住所・氏名、対象事実、対象事実が生じ、又は生じようとしていると考える理由、法令に基づき措置等がとられるべきだと考える理由を記載した書面を提出する
その他の者 (a)通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信じるに足りる相当の理由がある場合で、かつ、(b)事業者・行政機関に通報すれば解雇等の不利益取扱を受けるおそれがある、あるいは事業者に通報すれば証拠隠滅のおそれがあるなど、法所定の場合にあたること

「その他の者」とは、「当該通報対象事実を通報することがその発生またはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者」(同法3条3号)で、親会社、消費者団体、警察、マスコミ等が考えられます。

通報は上表の順序で行う必要はなく、要件を満たせば、いきなりマスコミへ通報しても構いません。

適法な通報であるのに通報者を解雇、降格その他不利益取扱をすることは禁止されています(同法3〜5条)。解雇しても無効であり、降格等の不利益取扱に対しては通報者は原状回復、損害賠償の請求ができます。通報によって事業者の社会的信用が毀損されても、事業者は通報者に損害賠償を請求することはできません。
 なお、弁護士は守秘義務を負っており対象事実が外部に漏れることはないため、外部窓口として指定されている弁護士ではない弁護士に相談した場合でも、解雇等の不利益処分は許されないと考えられています。

これに対し、従業員等が不正の目的で通報した場合は適法な通報ではなく、保護の対象ではありません(同法3条)。また、通報にあたっては、無関係な第三者の個人情報を流したり、通報対象事実とは関連のない営業秘密を流出させてはなりません(同法8条参照)。

事業者としては、違法行為や不正行為を行わないことは当然ですが、万一、違法行為等が行われていた場合に、いきなりマスコミ等へ通報されては大きなダメージを受けます。早期に内部で是正がなされるためには、事業者内部・外部(弁護士等)に通報窓口を設け、通報を受けた場合の対処方法を整備しておくことが肝要です。

以上

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