社会福祉法人の運営Q&A
社会福祉法人の運営Q&A一覧
Q1 社会福祉法人の機関設計
Q2 評議員・評議員会の役割
Q3 評議員の選任、解任
Q4 評議員の任期
Q5 評議員会の決議事項
Q6 評議員会の開催時期
Q7 評議員会の招集
Q8 評議員の提案
Q9 評議員会の決議
Q10 評議員会の理事、監事の説明義務
Q11 評議員会の違反
Q12 理事・監事の員数
Q13 親族の理事等への複数就任
Q14 理事・監事の任期
Q15 理事・監事の選任、解任
Q16 理事・監事の辞任
Q17 理事会の権限・議決事項
Q18 内部管理体制
Q19 理事会開催の回数
Q20 理事会の招集
Q21 理事会の決議
Q22 理事会の代理出席
Q23 理事の義務と責任
Q24 理事長の職務・権限
Q25 競業取引・利益相反行為
Q26 理事の報酬
Q27 監事の職務・責任
Q28 理事・監事・評議員の損害賠償責任
Q29 法人の決算手続
Q30 定款の備置、閲覧
Q31 特別な利益の提供禁止
Q32 特定社会福祉法人
Q33 社会福祉法人の登記
Q34 定款の変更
(単に「◯条」としているのは、社会福祉法です)
機関設計
A 社会福祉法人には、必ず、評議員、評議員会、理事、理事会、監事を置かなければなりません(36条1項)。
また、会計監査人を置くかは、原則は任意ですが(同条2項)、「特定社会福祉法人」(⇒Q32)は必ず置かなければなりません(37条)。
評議員・評議員会
A 評議員は評議員会の構成メンバーです。
評議員会は、法人運営に関する重要事項を決定し、役員の選任・解任を通じて、事後的に法人運営を監督する役割を果たします。
Q3 評議員の選任、解任はどのような決まりになっていますか?
A 評議員は定款に定める方法で選任します(39条)。解任も定款に定める方法によります(31条1項5号)。
なお、理事・理事会が評議員を選任・解任するとの定款規定は無効です(31条5項)。
A 選任後4年(※)以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終了の時までです(41条1項。例えば、2023年6月に選任された評議員の任期は2027年3月までの会計年度についての定時評議員会の終了のときまでになります)。
(※)定款で、6年まで伸長できる。
A 評議員会は、社会福祉法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議することができます(45条の8第1項)。
社会福祉法で定める事項は、①理事・監事・会計監査人の選任・解任、②役員等の責任の減免、③定款変更、④解散、⑤合併、⑥役員の報酬決定、⑦計算書類の承認、⑧福祉充実計画の承認などです。
なお、各回の評議員会では、招集通知に記載された議題に限り、決議できるとされています(45条の9第9項。すなわち、招集通知に記載のない議題を動議として提出することはできない。なお、定時評議員会では、これに加えて会計監査人の出席を求める決議もできる)。
A 社会福祉法は、定時評議員会を毎会計年度の終了後一定の時期に招集しなければならないとし(45条の9第1項)、会計年度は4月1日から翌年3月31日までの1年間とされているので(45条の23第2項)、毎年1回、一定の時期に必ず開催しなければなりません(定時評議員会)。
また、必要がある場合は、いつでも開催できます(45条の9第2項。臨時評議員会)。
なお、評議員の全員が書面で議案に賛成したときは、評議員会の決議を省略することができます(同条10項で準用する一般法人法194条)。報告事項についても同様です(同195条)。もっとも、評議員会は最高決定機関なので、この方法は、緊急を要する場合や評議員会を開催することが事実上不可能な場合に限定するべきでしょう。
A 評議員会は理事長が招集します(45条の9第3項)。
また、評議員は、理事長に対し、会議の目的事項(議題)と招集の理由を示して評議員会を招集するよう請求できます(同条4項)。この請求に対し、①遅滞なく招集手続が行われない場合、②招集請求から6週間以内を会日とする招集通知が発せられない場合は、請求した評議員は、所轄庁(30条)の許可を得て、自ら評議員会を招集することができます(45条の9第5項)。
A できます。
評議員は、理事長に対し、評議員会の日の4週間前までに、「一定の事項」(例えば、「理事選任の件」)を評議員会の議題にするよう請求することができます(45条の8第4項で準用する一般法人法184条。議題提案権)。
また、評議員会の場で、議題(理事提案でも上記の評議員提案でもよい。ただし、評議員会の場で評議員が新たな議題を提案することはできない)に関し、議案(例えば、「理事にAを選任する。」)を提出することができます(いわゆる動議。同185条。議案提案権)。そして、提案予定の議案を招集通知に記載するよう理事長に請求できます(評議員会の4週間前までに。同186条。通知請求権。上記の議題の提案と同時にしてよい)。
A 評議員会の決議は、決議の加わることのできる評議員の過半数の出席で、その過半数の賛成によります(45条の9第6項。普通決議)。定足数、議決要件とも定款で加重することは可能です(緩やかにすることはできない)。
ただし、①監事の解任、②役員等の責任の減免、③定款変更、④解散、⑤合併については、議決に加わることができる評議員の3分の2以上の賛成が必要です(同条7項。特別決議)。
いずれの場合も、当該決議に特別の利害関係を有する評議員は決議に加わることはできません(同条8項)。
なお、評議員会については、会社の株主総会のような書面投票制度はありません(全員同意による決議省略はQ6)。
Q10 評議員会において理事・監事は説明する義務がありますか?
A 理事・監事は、評議員会において、評議員から議題・議案に関して説明を求められたときは、これに対して必要な説明をしなければなりません。ただし、質問事項が当該評議員会の目的事項に関しないもの(議題とも報告事項とも関係ないもの)、その他正当な理由がある場合(例えば、回答に調査を要し即答できないものやプライバシーに係わる質問)には説明をする必要はありません(以上、45条の10)。
説明する義務があるにも係わらず、不十分な説明のまま決議を強行したら、決議取消しの理由になることがあります。
Q11 評議員会の決議に手続上の違反があったり、法令・定款に違反する内容であった場合はどうなりますか?
A 評議員、理事、監事は、次の訴えを提起することができます。
⑴ ①評議員会の招集の手続、決議の方法が法令・定款に違反し、又は著しく不公正なとき、②決議の内容が定款に違反するときは、決議取消しの訴え(45条の12で準用する一般法人法266条1項)
⑵ 手続上の違反が著しく、決議の実体があるとはいえない場合は、決議不存在確認の訴えを(同265条1項)
⑶ 決議内容が法令に違反する場合は決議無効の訴え(同条2項)
これらの訴えが認められて確定するまでは、各決議は一応有効なものと扱われます。
理事・理事会、監事
A 理事は6名以上、監事は2名以上でなければなりません(44条3項)。
Q13 理事等に親族関係のある者が複数就任することができますか?
A 理事については配偶者・三親等内親族などの特殊関係者は3人を超えて、または理事総数の3分の1を超えてはならないとされています(44条6項)。
監事は、理事・職員を兼ねることはできず(同条2項)、理事・他の監事の配偶者・三親等内親族などの特殊関係者であってはなりません(同条7項)。
A 理事・監事の任期は、選任後2年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結のときまでです。ただし、定款で、これより短い任期とすることができます(伸長することはできない。以上、45条)。
A 理事・監事は評議員会で選任します(43条1項)。
解任は、当該理事・監事が①職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき、②心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えられないときに限り、評議員会の決議によって解任できます(45条の4第1項。監事の解任は特別決議による[45条の9第7項1号])。
なお、理事・監事に①その職務の執行に関し不正の行為、②法令・定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該理事・監事についての解任決議が否決されたときは、評議員は、評議員会の日から30日以内に裁判所に解任の訴えを提起することができます(45条の4第3項で準用する一般法人法284条)。
A 理事・監事と法人の関係は委任関係とされるので(38条)、いつでも辞任することができます(民法651条1項)。ただし、法人に不利な時期に辞任したときは、辞任者は法人に対し損害賠償義務を負います(同条2項1号)。なお、辞任によって社会福祉法又は定款に定めた員数に不足を生じるときは、後任者が選任されるまで理事・監事の職務を継続しなければなりません(45条の6第1項)。
A 理事会は、法人の業務の執行を決定し、理事の職務執行を監督します。
理事会の議決事項は、①法人の業務執行に関する事項、②理事長の選任、解任ですが、①のうち次のものと②は必ず理事会で決議する必要があります(45条の13第4項。①のうち次のもの以外は理事会の決議で理事長、業務執行理事に委任することができる)。
・重要な財産の処分、譲受け
・多額の借財
・重要な役割を担う職員の選任、解任
・従たる事務所その他重要な組織の配置、変更、廃止
・内部管理体制の整備
・定款規定に基づく役員等の損害賠償責任の一部免除
A 「理事の職務の執行が法令および定款に適合することを確保するための体制その他社会福祉法人の業務の適正を確保するために必要なものとして厚生労働省令で定める体制」(45条の13第4項5号)をいいます。会社では内部統制システムとも呼ばれます。
「基本方針」を策定している法人は多いと思いますが、基本方針のみをいうのではなく、基本方針を具体化する諸規定(理事会規程、監査規程、各種職務・業務規程等)を含みます。
内部管理体制の整備は理事会の専決事項であり、理事長に一任することはできません。
特定社会福祉法人(⇒Q32)ではその体制整備を必ず策定しなければなりませんが(同条5項)、一般の社会福祉法人でもその策定が望まれます(体制が不備であったため理事長が投機に走って法人に損害を与えると、体制整備を怠った他の理事も任務懈怠に問われる可能性がある)。
A 理事長、業務執行理事は、3ヶ月に1回以上、自己の職務の執行を理事会に報告しなければならないとされているので、理事会は年4回以上開催する必要があります。ただし、上記の報告は、定款に、毎会計年度に4ヶ月を超える間隔で2回以上すること(例えば、「6月と11月の2回」)と定めることができるとされているので、その場合は、その回数で開催すればよいことになります(以上、45条の16第3項)。
A 各理事が招集できます。定款・理事会で招集権者を決めた場合は、その理事(通常は、理事長)が招集します(以上、45条の14第1項)。
招集権者を決めた場合は、他の理事は、招集権者に議題を示して理事会の招集を請求できます(同条2項)。招集の請求があったのに、5日以内に、請求日から2週間以内の日を開催日とする招集通知が発せられないときは、請求した理事は理事会を招集することができます(同条3項)。
A 理事会の決議は、決議に加わることができる理事の過半数の出席で、その過半数をもって行います。定数、決議要件とも加重することもできます(緩和はできない。以上、45条の14第4項)。決議に特別の利害関係をもつ理事(例えば、理事長解任の対象となる理事長)は決議に参加できず(同条5項)、定足数にも含まれません。
理事会へは代理出席は認められません。理事は理事会への出席義務があり、理事会は理事自身が議論を交わすことが予定されているからです。
なお、議題について理事の全員が書面で同意した場合は、理事会の決議を省略できます(同条第9項で準用する一般法人法96条)。
理事会の決議については議事録を作成し(45条の14第6項)、主たる事務所に備え置かなければなりません(45条の15第1項)。決議に反対した理事は、議事録に異議をとどめておかないと(反対した旨を記載させておかないと)賛成したものと推定されます(45条の14第8項)。
A 理事会に代理人を出席させることは認められません。理事は理事会への出席義務があり、理事会は理事自身が議論を交わすことが予定されているからです。
A 理事には、以下の義務と責任があります。
1 理事の職務・義務
理事は理事会の構成員として理事会を通じて法人の業務執行を決定し、理事の業務執行を監督します。
理事には、以下のような義務が課されます。
・善管注意義務(“プロ”としての注意を尽くす。38条、民法644条)
・忠実義務(法人の利益より自分の利益を優先してはならない。45条の16第1項)
・競業避止義務等 ⇒Q25参照
・報告義務 …法人に著しい損害を及ぼすおそれがある事実を発見したときは、監事に報告しなければならない(45条の16第4項で準用される一般法人法85条)。
・説明義務 …評議員会での説明義務(⇒Q10参照)
2 理事の責任
理事が、その任務を怠った(上記の義務違反も含まれる)ことにより法人に損害を与えた場合、法人に対し、損害賠償責任を負います(45条の20第1項)(⇒Q28)。
また、理事がその職務を行うにつき悪意・重過失があり、あるいは計算書類等に虚偽記載等があったときは、これにより第三者に与えた損害につき、当該第三者に対し直接に損賠償責任を負います(45条の21第1項、第2項)。
背任は刑法より重い刑罰を受けます(155条)。収賄行為も処罰されます(156条)。
A 理事長は、理事会の決定に基づき、法人の業務を執行し(45条の16第2項1号)、対外的に法人を代表します(45条の17第1項)。45条の13第4項に定める事項(⇒Q17)以外の事項については、理事会の決議でその決定を理事長に委任することができ、その場合は、これら事項についての決定も理事長権限になります(通常は、理事会規程や職務規程等により、理事長の決定範囲を明確にしておく)。
なお、定款等で理事長の対外的代表権に制限を加える(例えば、一定事項につき理事会の決議を要する)ことはできますが、このような制限は善意の第三者に対抗できないとされています(そのような制限を知らない、あるいは知っていても制限はクリアされた[上記の例では承認を得た]と信じた第三者には、制限に違反したことを理由に理事長の行為の無効を主張できない。45条の17第2項)。
A 理事(理事長に限らない)は、原則として①の行為をすることはできず(競業避止義務)、理事会の承認を得た場合に限り許容されます(45条の16第4項で準用する一般法人法84条1項)。また、②、③の行為をするには理事会の承認を要し(同)、承認がない場合は、それらの行為は原則として無効です。
① 法人と同種の業務(競業行為)を行うこと
② 法人との直接取引(例えば、理事と法人との間での売買契約)
③ 法人と当該理事の間の利益が相反する行為(利益相反行為。例えば、理事の債務を法人が保証する)
もっとも、理事会の承認を得た場合でも、法人に損害を生じたときは、当該理事、賛成した理事等は、法人に対し,損害賠償責任を負うことがあります。
A 定款または評議員会の決議で決めます(45条の16第4項で準用する一般法人法89条)。定款の定めも評議員会の決議もないのに、報酬を支払うことはできません。
監事の報酬についても、同様です(45条の18第3項で準用する一般法人法105条)。
なお、法人は、理事・監事・評議員の報酬等につき支給基準(不当に高額でないこと)を定め、評議員会の承認を受けて、報酬基準に従って支給しなければならないとされています(45条の35)。
支給基準につき承認を受けたときは、遅滞なく公表しなければなりません(59条の2第1項第2号。公表はインターネットで[規則10条1項])。また、支給基準は財産目録等とともに備え置くものとされています(⇒Q30)。
» 定款、評議員会の議決で、どこまで具体的に決める必要があるか?
最低限、理事・監事ごとの総額を決める必要があります(「理事の報酬は、総額年○○万円以内とし、各理事の具体的金額は「支給基準」に基づき理事会で決定する。」等)。
» 退職慰労金
退職慰労金も「報酬」に含まれるので、支給するには定款または評議員会の決議が必要です。支給基準は、退職慰労金についても規定する必要があります。
A 監事は、以下の職務を行い、責任を負います。
1 監事の職務・権限、義務等
⑴ 業務・会計監査
監事は、理事の職務執行を監査し、監査報告書を作成します(45条の18第1項)。また、計算書類等の監査をします(45条の28第1項)。
このため、監事は、いつでも理事・職員に事業の報告を求め、法人の業務・財産の状況を調査することができます(45条の18第2項)。
⑵ 理事会招集請求
理事に不正の行為等がある場合で、必要と認めるときは理事会の招集を請求できます(45条の18第3項で準用する一般法人法101条2項)。請求したのに、5日以内に請求日から2週間内の日を会日とする理事会が招集されないときは、当該監事は自ら理事会を招集することができます(同101条3項)。
⑶ 差止請求権
監事は、理事は法人の目的・法令定款に違反する行為をし、またそのおそれがあり、法人に著しい損害を生じるおそれがあるときは、理事に対し、当該行為をやめるよう請求できます(同103条)。
⑷ 評議員会提出議案等の調査、説明義務
監事は、評議員会への提出議案・書類等を調査します(同102条)。
⑸ 評議員会の議案の同意・提出権
監事の選任の議案は監事の過半数の同意が必要であり、監事は理事長に監事選任議題・議案の提出を請求できます(43条3項で準用する一般法人法72条)。また、会計監査人の選任・解任・不再任の議案は監事の過半数をもって決定するものとされています(同73条1項)。
2 監事の義務
監事は、次のような義務を負います。
・善管注意義務(民法644条)
・理事会への出席義務 …監事は、理事会への出席権(義務でもある)があり、必要があるときは意見を述べなければならない(同101条1項)。
・理事への報告義務 …理事に不正の行為、法令定款違反の行為等があることを認めときは、理事会に報告しなければならない(45条の18第3項で準用する一般法人法100条)
・評議員会での説明義務等 …評議員会に出席して、評議員からの質問に対し説明をする義務がある(45条の10)
3 監事の責任
損害賠償責任、刑事罰等は理事と同様です(⇒Q23、28)
A 理事・監事・評議員は、次のような賠償責任を負います。
1 法人に対する賠償責任
理事・監事・評議員(役員等)がその任務を怠り、法人に損害を与えたときは、法人に対し、損害賠償義務があります(45条の20第1項。評議員も責任を負うことに注意)。
この責任については、次の方法による減免が認められています(評議員については①のみ)。
① 評議員全員の同意による、責任の全部の免除(45条の22の2の準用による一般法人法112条)
② 評議員会の決議による、下記責任限度額を超える部分の免除(同113条)
この減免を認める定款の定めがあること、役員等に悪意・重過失がないことが必要で、評議員会の決議[特別決議]で免除できます。
責任限度額
理事長 報酬年額(法令で定める計算方法による)の6年分
業務執行理事・職員兼務の理事 報酬年額の4年分
外部理事[※]、監事 報酬年額の2年分
③ 理事会の決議による、上記責任限度額を超える部分の免除(同114条)
この減免を認める定款の定めがあること、役員等に悪意・重過失がないこと、免除が特に必要と認められることが必要。理事会の決議で、免除することができます。
ただし、理事会の決議があったときはその旨を評議員に通知する必要があり、議決権を有する評議員の10の1以上が異議を述べたときは、この方法による免除はできません。
④ 契約による、契約で定めた限度額(上記の責任限度額以上)を超える部分の免除(115条)[外部理事※、監事に限る]
この減免を認める定款の定めがあること、上記内容の責任限定契約を締結していること、当該理事・監事に悪意・重過失がないことが必要。当該契約によって免除されます。
[※]外部理事…理事長・業務執行理事・職員兼務の理事以外の理事
2 第三者に対する賠償責任
理事・監事・評議員がその職務を行うにあたり故意・重過失により第三者に損害を与えた場合は、第三者に対し、直接賠償責任を負います(45条の21第1項)。理事が計算書類に虚偽記載をした場合など、監事が監査報告に虚偽記載をした場合も同様です(同条2項)。
その他
A 決算手続は、次のように規定されています。
① 計算書類(貸借対照表、収支計算書)、事業報告、付属明細書を作成する(45条の27)
② 上記各書類につき、監事の監査を受ける(45条の28第1項)
会計監査人設置法人では、計算書類とその附属明細書につき監事・会計監査人の、事業報告とその附属明細書につき監事の監査を受ける(同条2項)。
③ 上記各書類につき、理事会で承認する(45条の28第3項)
④ 計算書類、事業報告、監査報告を評議員へ提供する(45条の29)
⑤ 計算書類につき評議員会の承認を受け、事業報告を評議員会へ報告する(45条の30第2,3項)
⑥ 計算書類、事業報告、付属明細書、監査報告を備え置く(45条の32)
⑦ 上記⑥の書類を財産目録等とともに所轄庁へ届出る(59条)
Q30 定款等の備置、閲覧についての規定はどうなっているか?
A 備置・閲覧等に供しなければならないのは、下記の書類です。
書類 | 根拠条文 | 備 置 | 閲 覧 |
定款 | 34条の2 | 主たる事務所及び従たる事務所に | 評議員、法人の債権者は、閲覧、謄抄本の交付請求ができる。 それ以外の者は、閲覧請求ができる(正当な理由があるときは、法人は拒絶することができる) |
評議員会議事録 | 45条の11 | 主たる事務所に10年間、 従たる事務所に写しを5年間 |
評議員、法人の債権者は、閲覧、謄写請求ができる |
理事会議事録 | 45条の15 | 主たる事務所に10年間 | 評議員、法人の債権者(法人の債権者は、理事・監事の責任追及の必要がある場合に裁判所の許可を得たときに限る)は、閲覧、謄写請求ができる |
会計帳簿等 | 45条の24第2項、45条の25 | 会計帳簿の閉鎖のときから10年間 | 評議員は、閲覧、謄写請求ができる |
計算書類等 | 45条の32 | 主たる事務所に定時評議員会の2週間前から5年間、 従たる事務所に写しを定時評議員会の2週間前から3年間 |
評議員、法人の債権者は、閲覧、謄抄本の交付請求ができる。 それ以外の者は、閲覧請求ができる(正当な理由があるときは、法人は拒絶することができる) |
財産目録等 | 45条の34 | 主たる事務所に5年間、 従たる事務所に写しを3年間 |
誰でも閲覧請求ができる(正当な理由があるときは、法人は拒絶することができる) |
なお、正当な理由なくこれらの請求を拒んだときは、20万円以下の過料に処せられます(165条3号)。
A 社会福祉法人は、理事その他の法人の「関係者」(その範囲は、政令で定められている)に、特別の利益を与えることが禁止されています(27条)。「特別な利益」の例としては、次のものが上げられます。
・関係者から不当に高い価格での物品等の購入、賃借
・関係者に対し、法人の財産を無償または不当に低い金額で譲渡、賃貸
・役員報酬基準や給与規程等に基づかない報酬・給与の支給
役員等が特別な利益の供与をしたら、供与した役員等・供与を受けた役員等は、任務懈怠として法人に対する損害賠償責任を負い、背任罪を構成することもあります。
A 経常収益30億円、または負債60億円を超える社会福祉法人をいいます(社会福祉法施行令13条の3)をいいます。
特定社会法人は、会計監査人を置くこと、内部管理体制を整備することが義務づけられています。
A 社会福祉法人も登記しなければなりません(29条1項)。
登記すべき事項(例えば、理事長の交代)については登記をしないとこれを第三者に対抗できない(旧理事長が第三者と契約しても法人はその契約の無効を主張できない。29条2項)。なお、登記すべき事項について登記を怠った場合は、理事は、20万円以下の過料に処せられる(165条1号)。
A 評議員会の特別決議(⇒Q5)によって変更できます(45条の第1項)。
変更は、事務所の所在地、基本財産の増加、公告の方法を除き、所轄庁の認可が必要です(同条第2項、規則4条)。